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インタビュアー:谷川佳恵 「丹波新報社」記者
Den Corporation代表:矢野健太
谷川:まずは、「MIPEL THE BAG SHOW」での受賞
おめでとうございます。
矢野:ありがとうございます。
谷川:このバッグ、とても重厚でありながら繊細ですよね。
また、テーマ性があるということが、このデザインからも
うかがえます。
矢野:ありがとうございます。
まず「〇△□」は、禅の持つ宇宙や無限の可能性を意味
していますが、製作のコンセプト「日本文化を活かした
革と金属の融合」を短期間ながらも、試行錯誤して実現
しました。
自分達としては、完璧と思えるほどのものではありません
でしたが、それでも現地へ赴いていただいた皆さんの
おかげで「MIPEL THE BAG SHOW パノラマ部門賞」
を賜ることができました。
谷川:矢野さんのこれまでの本業は、お父様の鉄工所を
受け継いだお仕事なんですよね? それがまたなぜ?
矢野:その通りです。 鉄工業から鞄製作に至った経緯は、
金属加工の取引をしていた先で知り合った工業デザイナー
の 高尾 利幸 氏と意気投合しまして、製革・鉄工など
地域の文化や技術を活かして物作りができないかという
流れから、イタリアで行われる「2014 MIPEL THE BAG
SHOW」に出展することを目的にチームを組んだのが
始まりです。
ところが、あのショーには姫路皮革協会に加盟している
団体でないと出展できない。 そこで前實製革所さんを
通して、ようやく出展できたわけです。
谷川:なるほど。高尾さんといえば、姫路では名の知れた
工業デザイナーだそうですね。
矢野:その通りです。
『飛行帰還』という旧海軍パイロットを扱った小説を
文芸社から出版した作家(鷹尾 利幸・たかお りこう)
でもあります。
その高尾さんが、ある日うちにやってきまして、バッグで
使われる金具について父が相談を受け、製作することに
なったんです。
谷川:お父様は、この道25年のベテランなんですよね。
矢野:はい。 父のアイデアで、部品をばらせる組み立て式
金具を試行錯誤の末、考案し採用しました。
ハンドストラップの金具は、飛行機の構造からイメージ
したものです。
もっとも苦心したのが、0.6㎜のステンレス鏡面仕上げ
でしたが、父と2人で特殊な製法により実現しました。
通常の製法では不可能なものでした。
谷川:その辺りはもちろん企業秘密なんですよね。
矢野:はい。 でも灯台下暗しのたとえ通り、意外に簡単な
ことだったんですね。
その他、見えない箇所にもさまざまな工夫を施していて、
構造そのものがデザイン性を持つというか、そのあたりも
評価のポイントになったのだと思います。
金具の部品点数だけで100点あります。
ボルトカバーなどはカラーアルマイト処理後、ビーズ
ショットを施して、光沢を出したりしました。
この技術をカバンに採用するのは初めてとなります。
材質はオールステンレスとアルミです。
谷川:うーん、思わず唸らされます。
私には技術的な難しいことはわかりませんませんが、
こんな小さな部品一つにここまでこだわるというのは、
驚きですね。
その後の改良にも言葉では言い尽くせない苦心があった
ことでしょう。
矢野:はい。 受賞からすぐに改良を重ね、今やっと販売
可能なところまでこぎつけました。
谷川:気が遠くなるようなお話ですね。
日本の伝統の技がイタリアの国際的な見本市で認められた
というのも驚きですが、多くの日本人に忘れ去られようと
している技が外国の地で評価されるというのは、何か残念
な気がします。
製造原価の安い、いわゆる有名ブランド品とは一線を画
した本物が評価されたという点では「MIPEL THE BAG
SHOW」の選考者の目も節穴ではなかったということ
なんでしょうか。
矢野:はい。 おかげさまで大変名誉ある賞をいただくこと
ができました。
あげまきのノベルティが選考者に好印象を与えたことも
評価の一因かと思います。
これからもコンセプトを曲げず、新しい物へ一心に挑戦
していきます。
谷川:ぜひ、流行にとらわれず、日本の良き伝統を守り続け
ていただき、それでいて革新的な新しい風をこの業界に
吹き込んでくださることを期待します!
今日は本当にありがとうございました。
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